オードリー・タン

息子がオードリー・タンさんに興味を持っているようだ。

台湾のコロナ政策が成功を収め、マスクマップや国民に対する情報公開などデジタル庁の役割がフォーカスされ、オードリー・タンさんに世界からの注目が集まった。

 

日本のテレビ、子供向けのNHKの番組でも彼女の特集が組まれ、息子はその番組を見て彼女のことを知ったようだ。

それ以前にも私が軽く台湾の政策や、台湾の現在の女性総統、そしてオードリー・タンさんの話は伝えていたと思う。

私も大きく感銘を受けていたのだ。

 

数日前にまた息子が彼女の話を始めたので、彼女の本を読んでみたら?と勧めてみた。

調べてみると数冊以上の本が出版されており、タイトルと評価をざっと見て候補を絞る。

少々の調査の後、「これなんか良さそうじゃない?」と具体的に息子に勧めたら、「お母さんがまず読んで、良かったら僕も読む」ととても間違いがないがちょっと失礼な提案をしてきた。

まぁ私も興味あるしな、と、息子に甘すぎるかな、と、いくつかの考えが頭をよぎるが、結局それに乗っかることにした。

 

結局選択したのは、『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』。

読者数も多そうで、なんとなく内容がまとまっていそうな感じがした。

 

読んでみると、語り口調で、話を聞いているかのように文章がすらすらと頭に入ってきて、現在小学校5年生の息子にも十分読めそうな本だった。

もちろん小学生には難しい内容、人の思想だったり、政策内容だったり、台湾の歴史の話もあるのだが、それを流し読みしたとしても、息子の中に残るものは十二分にありそうな内容である。

大人の私が読んでも、ページをめくる度に脳を活性化させられるような、ハッとする発見や考え方、ときおり我が身を省みる言葉に出会う。

民主主義、教育、社会、IT、子育て、マイノリティ、仕事・・・

 

彼女の文章は明快で、論理的で、正直だ。

もともと彼女に対してとてもいいイメージを持っていた、贔屓目があると認めた上で、彼女の言葉を読めば読むほど、知れば知るほど、魅力的な方だなぁと思わずにいられない。

 

彼女のように、人を、物事を、社会を、ニュートラルに分析できたら、きっと心は穏やかなんだろう。

デジタル庁の仕事に加え、政務以外のこともこなすのは激務であるだろうし、処理しなければならない事案も一般の人の何倍にもなるだろうが、彼女の言葉からはその大変さは感じず、その全てをスピーディーに淡々と楽しんで片付けている印象である。

 

特に(いい意味で)理解できなかったのは、就寝前に資料を読み込んでおくと、起きたら答えが出ている、という現象で、もうこれは特殊な能力としか私には思えない。

まず、資料を読み込んだあと、何も思案せずにすぐに眠りにつけるのも信じられないし、就寝中にそれを夢で処理するなんてこと、夢をコントロールしているような感覚なんて万人にあるはずもないだろう。

もちろん、その結論を周りと共有するための言語化なり論理化の作業は"起きている"オードリー・タン氏が行うのだが。

 

私の感想がとっ散らかってしまっているが、この夢の部分以外はほぼすんなりと自分に入ってきて、とても気持ちの良い本だった。

真っ当なことを論理立てて、誰にでもわかるような文で本になっている。

 

私は子育て中の親の立場でこの本を読んでいたのだが、クリエイティブシンキング(想いを正確に言語化する能力)、クリティカルシンキングに関する彼女の意見には非常に納得させられ、日頃の自分の親としての子どもへの関わり方を非常に反省させられている。

 

息子はまだ読み始めていないが、彼には彼女の考え方のどの部分が刺さるだろう。

彼の想いを正確に受け取りたいので、彼が不得意である想いの言語化を辛抱強くサポートして、人に自分の想いをわかってもらうという成功体験を味わわせたい。